肌のバリア機能に最も重要なのは、“脂質のふた”とその修復機能ですが、一体この機能はどのように維持されているのでしょうか?今回は少しだけ詳しく解説します。
皮膚バリア機能の2つの要素
皮膚の最も表面にある“あか”になって剥がれ落ちる角層が、実は大変重要な役割をしています。例えば、“あかすり”をしてもらった後に、きちんと保湿をしないとどうなるでしょうか?ナイロンタオルでゴシゴシと体を洗って、熱い湯船に入ったらどうなるでしょうか?
角層の構造はレンガとその間を埋めるモルタルのようになっており、まさに人体の外壁です。前回のコラムでは、角層をラーメンや天ぷらそばの汁の表面にある脂分に例えてお話ししましたが、このモルタルにあたる脂質以外に、実はもう一つ重要な要素があります。それはレンガにあたるタンパク質が維持する“丈夫さとしなやかさ”です。(図1)
(図1)
①脂質のふた(モルタル)
角層のすぐ下には層板顆粒というつぶつぶ(図1)があり、健康な皮膚は乾燥や紫外線、擦り傷などに応じてセラミド等の脂質を角層に送り出します。前回のコラムでお話した通り、皮膚バリアは状況に応じて常に修復作業を繰り返しているわけですが、モルタルが足りなくなると、ヒビ割れ、カサカサになり、レンガも傷つきやすくなります。
②丈夫さとしなやかさ(レンガ)
外壁は丈夫であるに越したことはありませんが、しなやかさもないと私たちの皮膚の急な伸び縮み等には対応できません。これが、ただのレンガと角層の細胞が大きく異なる点です。ここでの主役はケラチン等のタンパク質です。また、このレンガはアミノ酸などの吸水性に富む物質を含んでおり、水分を保持することができます。例えば、長風呂の後に手のひらがふやけてシワシワになるのは、実は角層がスポンジのように水分を吸収するからだと考えられています。髪の毛も主な成分はケラチンですが、キューティクルが髪のツヤを維持するのと似て、角層も丈夫でしなやかでなければ、肌のハリやツヤが低下して肌のキメも粗くなってしまいます
バリア機能からみるスキンケア
それでは、解説した2つの要素を考慮したスキンケアの意義を考えてみましょう。
①脂質のふた
中学校の理科でワセリンを葉に塗って、気孔からの蒸散を防ぐ実験をご記憶の方もいらっしゃるかと思いますが、理屈は一緒です。ただ、ワセリンはペースト状でどうしてもベタベタするので、より使い心地の良いクリームや乳液が一般的に使われています。また、セラミドのような、実際の角層脂質と似た成分を含む保湿剤もあり、より高い機能が期待されています。
あかすりや、角質を剥がすパック、ケミカルピーリング等は、“あか”となって徐々に剥がれ落ちるべきものを除去するわけですから、バリア修復機能にも負荷をかけることになります。
②丈夫さとしなやかさ
角質細胞は天然保湿因子を持つので、空気中の水分をも吸収(吸湿)するほどの能力を持つと言われています。ですから、化粧水を塗るのは、角層にうるおいを与える行為と考えられます。では、天然保湿因子そのものを補うのはどうでしょうか?よく用いられるのはアミノ酸以外の天然保湿因子の1つである尿素です。尿素配合のクリームや乳液は、角層にうるおいとしなやかさを与えます。冬の乾燥した時期に、かたく乾燥したかかとに尿素クリームを塗るのは、この働きを利用したものです。ただ、皮膚からケラチンを溶かし出す実験をするときにも用いるくらいなので、いくら天然保湿因子とはいっても、尿素は諸刃の剣とも言えるかもしれません。
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この先生が監修しました。
Michael Lee(マイケル·リー)
若々しく力強い生き方の専門家
米国Duke大学卒業
大学病院で医師として様々なライフスタイルの患者を治療
Johnson & JohnsonでPMとして医薬品開発に参加
レイコップ株式会社で代表開発者としてQuality of Lifeに関連した製品を開発_____________________________________________________________